ゲキの河(下)
昭和のはじめ、十五年戦争への破滅の道を歩む日本。
左翼運動家の父は官憲に捕えられ、母は、病死してしまう。
暗黒へ突き進む歴史の流れを背負ってたくましく生きるゲキとその弟妹。
運命のいたづらに、弟は満州へ、妹は沖縄へと売られてしまう。
弟と妹を求めてゲキの長く苦しい旅は続く……。
他短編「何かが起きる」収録。
“電車バカ”と呼ばれている都電の運転手善さん。
ある日運転中に、グレた少年実をひきそうになります。
実にかつての息子の面影を見た善さんは、自分の家に連れ帰るのですが…。
善さんは、広島で被爆し、その爪跡は善さんを不治の病、白血病で死なせてしまう。
東京は下町、庶民の生活の香りを残した街も開発の波が押し寄せてきた。
そこにお金を積んでも、テコでも動かない初老の男がいた。
一夜にして十万人以上の生命を奪った東京大空襲で家族の全てを失くしていた男は、家の下で焼き殺された肉親と別れることができなかった。
アメリカ占領下の沖縄。
闘牛に熱を上げる父、夢のない日々を送る息子。
ある日、母は米軍トラックにひき殺されてしまう。
必死に米軍の責任を追求する息子は、沖縄の過去と現在に激しい怒りをおぼえてゆく。
他短編「冥土からの招待」「うじ虫の歌」収録。
三十七年前の広島、まわりを山に囲まれ、市内には幾筋もの川が流れる美しい町だった。
当時小学校一年生の中沢啓治は見た、八月六日の朝、すさまじい原爆の熱線とそこに繰り広げられた地獄絵巻を。
収録5編「おれは見た」「永遠のアンカー」「出発の歌」「拍子木の歌」「いいタマ一本」続きはこちらから⇒ttp://www.ebookjapan.jp/shop/book.asp?sku=60000636